カレー屋で「手仕込みとんかつカレー」なるものを食した。
かつカレーは久しぶりだ。
口に運ぼうとする直前の、揚がったとんかつの油の匂い。
さくさくと心地よいとんかつの歯ざわり。
これは・・。
山形屋7階大食堂のかつカレーを思い出した。
そういえば先日、日本橋高島屋の地下食堂でも、食器のこすれ合う音がホール中に響いているのを聞いた時も思い出したっけ。
まだ小さい頃、地元で一番の市街地へ出かけることを「まちへ行く」と言っていた。
月に一度、母親に連れられて妹と「まちへ行く」のは楽しみだった。
今も残る路面電車のターミナル駅の停車場まで歩いて15分。
そこから繁華街まで40分。
その道行きは子供にはかなり長く感じられる、なかなかの一大イベントだった。
そして「まち」で一番大きなデパートの、7階大食堂のかつカレー。
ごちそうだった。
どうして、こんなにもひとつながりにはっきりと思い出せるのだろうか。
市電に揺られ、車窓から外を眺めていたときの気分まで鮮やかに心によみがえってくる。
ほんの少しの片栗粉の入ったカレーの味も、香ばしいとんかつも。
記憶はすべては思い出せない。 思い出せるのは、それが思い出だからか。
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